施工管理から設計への転職は「難しい」。それでも実現する人がやっていること
建築技術者の転職相談で、もっとも頻繁に受ける質問のひとつが「施工管理から設計に移れますか」というものです。
結論から先にお伝えします。難しいです。それでも、毎年実現している方はいます。
この記事では、建築技術者専門の転職エージェントとして面談を重ねるなかで見えてきた、「なぜ難しいのか」という構造と、「それでも設計に移っていく人が共通してやっていること」を、本音でお伝えします。
施工管理から設計が難しい、本当の理由
社内に既に希望者がいて、その人たちすら全員は移れていない
まず押さえていただきたいのは、設計に移れない理由は、本人の能力や努力の不足ではないということです。理由は、企業側の構造にあります。
施工管理から設計への異動を望むのは、転職市場に出てくる方だけではありません。今、その会社の中で施工管理として働いている人のなかにも、設計に行きたい人が一定数います。資格を持っている方もいれば、現場経験を積み重ねながら設計の機会をうかがっている優秀な方もいます。
ところが、その方たちが全員、希望どおりに設計部に異動できているわけではありません。社内に設計部の枠は限られていて、毎年動ける人数はごくわずか。希望していてもタイミングが合わない、ポジションが空かない、そういう状態が常態化しているのが実情です。
そのうえで、外から未経験で設計に転職してくる人を企業が採用するとなると、社内に対して説明がつきにくくなります。「社内で設計を希望している施工管理がこれだけいるのに、なぜ外から経験のない人を入れたのか」という問いに、人事が答えなければならないからです。
これが、施工管理から設計への中途転職が難しいと言われる、本質的な理由です。
大手ほどこの壁が高い
この構造は、企業規模が大きくなるほど、より強く働きます。
大手の建設会社や組織設計事務所では、社員数が多いぶん、設計を希望している施工管理職の人数も多くなります。社内のキャリア公募制度や定期異動の仕組みも整っていて、まずはそこを通って動くというルートが既定路線になっています。
そのルートが詰まっている状態で、外から未経験設計の中途を採用するというのは、企業にとって相当なハードルです。同時に、社内の他の希望者にとっても「自分はチャンスをもらえていないのに」という空気を生みます。だから採用判断のハードルが上がる。
中堅・中小規模の設計事務所や、建築デザインに特化した会社のほうが、このハードルは相対的に低くなります。社内のリソース構造が違うので、未経験中途を受け入れる余地が広い。「施工管理から設計に行きたい」という方が現実的な選択肢を持つのは、こうした規模の会社からというケースが多いのが実情です。
それでも設計に移れている人がやっていること
ここまで構造的な難しさをお伝えしてきましたが、実際に施工管理から設計に移れている方は、毎年います。その方たちには共通点があります。
一級・二級建築士を持っている
最も明確な共通項が、建築士資格の取得です。
一級建築士、もしくは二級建築士。設計に直接関わるこの資格を持っているかどうかは、書類選考の段階で大きな差になります。資格そのものが設計の仕事を保証するわけではありませんが、企業から見たときに「この人は設計の世界に本気で踏み込もうとしている」と判断できる、最初の客観的なシグナルになります。
特に施工管理職での実務経験を積みながら、夜間や週末に資格学習を続けて取得している方は、その努力のプロセス自体が評価されます。仕事をこなしながら勉強し続けてきたという事実が、入社後の学習意欲や粘り強さを示す材料になるからです。
エージェントから見て「設計でやっていけそう」と思える材料を見せている
資格と並んで、もうひとつ大事な要素があります。それは、面談したエージェントが「この人は設計の現場でやっていけそうだ」と納得できる材料を、本人がきちんと見せられるかどうかです。
私たちが面談で「この方なら設計でやっていけそうだ」と感じたとき、その印象はかなり高い確率で、企業側の面接担当にも伝わります。逆に、私たちが感じ取れなかった場合、その人を企業に推薦しても面接で同じところでつまずいてしまうことが多い。
ここでお伝えしたいのは、その「やっていけそう」と思える材料は、面談中に本人が言語化して見せるしかない、ということです。設計に行きたい理由、これまでに何を考え、何を準備してきたか、なぜ今このタイミングなのか。具体的な準備の話ができる方ほど、エージェントも企業も前向きに動けます。
現実的な動き方は2つ
施工管理から設計に移ろうとするとき、実際に取れる動き方は、大きく2つに整理できます。
社内異動を先に狙う(最短)
最も実現可能性が高いのは、社内での部署異動です。
「転職して設計に移る」よりも、「今の会社の設計部に異動する」ほうが、未経験者を受け入れる側のハードルがはるかに低いからです。社内の人事は本人の働きぶりを既に知っているので、未経験という不確実性を、これまでの実績で補えます。
このルートを選ぶ場合、まずやるべきことは、上司や人事に対して設計志望を明確に伝えておくことです。評価面談や1on1の場で意思表示しておくと、ポジションが空いたタイミングで声がかかる可能性が出てきます。
そして実は、もし社内で設計に挑戦できるルートが見えるのに、それを試さずに転職に進もうとした方は、転職市場でも不利になります。書類選考が通って面接に進んでも、企業の面接担当から「社内で設計に挑戦したことはありますか」と必ず聞かれるからです。建設会社で設計の経験を一切積んでこなかったという状態のままだと、評価がそこで止まってしまいます。
転職を考える前に、社内で動けるかどうかを試す。これが順序として最短です。
資格と努力の過程を作って転職する
社内異動が現実的でない、もしくは試したけれど動かなかった場合に、転職という選択肢が出てきます。
このとき必要なのが、先ほどお伝えした「資格」と「努力の過程を見せられる材料」です。一級建築士、もしくは二級建築士の取得は、ここで効いてきます。そして資格そのものに加えて、その資格を取得するまでの過程──いつから勉強を始め、どんな時間配分で続けてきたか──を語れることが、面接での評価材料になります。
何もない状態で転職市場に出ても、選考は通りません。準備期間として、まず1〜2年は資格取得と意思表示の積み重ねに使い、そのうえで動くというのが、現実的な道筋になります。
補足データ
参考までに、建築士資格と設計職市場に関する数字をいくつか挙げておきます。
- 一級建築士の合格率:例年、学科試験で15〜25%程度、製図試験で30〜40%程度、最終合格率では10〜12%前後で推移
- 一級建築士の受験資格:建築系学科卒業者は卒業後すぐに受験可能。学科合格後の実務経験で登録要件を満たす制度
これらの数字が示すのは、一級建築士という資格自体が、簡単に取れるものではないということです。だからこそ、これを取得している方は、企業側からも「努力できる人」と認識されます。
中途設計職の求人市場については、建築技術者全般の人材不足を背景に、設計人材の需要も継続的に存在しています。ただし、未経験設計を受け入れるポジションは、経験者求人と比べて圧倒的に少ないというのが実態です。
踏み出す前に
「施工管理から設計に行きたい」と感じている方に、最後にお伝えしたいことが3つあります。
- まず上司または人事に、設計志望を明確に伝える ── 社内で動けるなら、それが最短です
- 資格の学習を始める/実績を残す ── 一級・二級建築士。これが転職市場でも社内異動でも、評価の基準になります
- 転職市場の感触を、専門エージェントで把握する ── 自分の経験と希望が、市場でどう評価されるか。一度、専門エージェントに相談しておくと、社内での動き方の判断材料にもなります
ガウディキャリアでは、建築技術者の転職支援を専門にしています。設計への移行を考えていて、自分の市場価値や次のステップをまず知りたいという方は、お気軽にご相談ください。
「設計に移りたい」という気持ちは、本人にとって大きな決断のはじまりです。難しいからこそ、最初の一歩をどう設計するかが、その後の道筋を変えていきます。
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出典
- 建築技術教育普及センター 試験結果データ:一級建築士試験の合格率(学科・製図・最終)
ガウディキャリア INSIGHT 編集部
監修:ガウディキャリア(株式会社Wheelsup運営、有料職業紹介事業 14-ユ-301559)
施工管理経験があるキャリアコンサルタントなど、現場を知る専門家と連携し、独自の取材と分析に基づいたコンテンツを発信しています。