「ゼネコンからデベロッパーに移れば年収が上がる」は、実態と違います
若手の建築技術者の転職相談で、よく聞く言葉があります。「ゼネコンはきついので、20代のうちにデベロッパーに移れば、年収も上がって働き方も楽になりますよね」というものです。
結論から先にお伝えします。働き方は、確かに変わります。ただ、年収は上がるどころか、下がることのほうが多いです。
「デベロッパーに移れば、年収も100万円くらい上がるはず」。そう考えている若手の方は、実際に少なくありません。けれど、私たちが転職支援を重ねてきた実感は、その逆です。
この記事では、20〜30代前半の若手の建築技術者に向けて、業態を移すと年収が実際どう動くのかを、本音でお伝えします。
なぜ業態を移すと、年収はむしろ下がるのか
まず押さえていただきたいのは、ゼネコンの年収には、残業代が大きく乗っているという事実です。
ここに、業態を移したときの落とし穴があります。
デベロッパーの工事監理職や、デベロッパーを親会社に持つ建設会社に移ると、残業時間は大きく減ります。働き方としては、それが転職の目的だったはずです。ところが、残業が減るということは、残業代も消えるということです。残業代が減るぶん、額面の年収は下がりやすくなります。
たとえばデベロッパーの工事監理職への転職では、100〜200万円ほど下がるケースが、私たちが扱ってきた中では多くあります。「年収アップ」とは逆の動きです。
これは本人の交渉力や能力の問題ではありません。残業代の比率が大きいゼネコンの給与から、残業が少ない業態の給与に移ること自体に、額面が下がる力が働いているのです。
「年収アップ」と書かれた求人の、数字の見方
それでも「デベロッパーで年収アップ」という情報を目にすると、迷うと思います。若手の場合、この数字はとくに慎重に読む必要があります。
求人票に高い年収レンジが書かれていると、上がりそうに見えます。ただ、レンジの上限で提示されるのは、よほどの即戦力に対してです。若手は、これからの伸びしろを見込んで採用される部分が大きく、求人票のレンジでも上限の額で提示されることは、まずありません。実際に提示されるのは、レンジの中ほどから下になります。
そのうえで、デベロッパーは残業が少ないので、提示された年収と、実際に受け取る額にズレがありません。残業代で膨らむことがないぶん、提示額がほぼそのまま実態の年収になります。
つまり若手は、残業代が乗って高くなっているゼネコンの現年収を、上限では出ないデベロッパーの提示額と比べることになります。だから、移ると下がりやすいのです。
業態を移すと、年収はどう動くのか
ここからは、あくまで20代の若手建築技術者が転職した場合を前提に、業態ごとの年収の動きを整理します(企業・案件により変動します。経験年数や役職が上がると、動き方も変わります)。
| 転職先の業態 | 年収の動き | 月の残業 |
|---|---|---|
| デベロッパー工事監理職 | 100〜200万円ダウン | 10〜30時間 |
| CM会社のプロジェクトマネージャー職 | 100〜200万円ダウン | 30〜50時間 |
| 建設テック企業 | 100〜200万円ダウン | 10〜30時間 |
| デベロッパー親会社系の建設会社の施工管理 | 微減〜維持 | 20〜40時間 |
| アパートメーカー(自社施工)の施工管理 | 微減〜維持 | 20〜40時間 |
| 規格住宅ハウスメーカーの施工管理 | 微減〜維持 | 20〜40時間 |
見ていただくと分かるとおり、「上がる」業態は、ほぼありません。多くが「微減〜維持」で、働き方が良くなるぶん、年収はそのままか少し下がります。なかでもデベロッパー工事監理職、CM会社のプロジェクトマネージャー職、建設テック企業は、若手だと下がり幅が大きくなりやすい業態です。
たとえば、スーパーゼネコンに勤める28歳で、一級建築士と一級建築施工管理技士を持ち、年収850万円という方がいました。この方が大手企業から得た内定は、次のとおりでした。
- 大手CM会社からの提示は、残業代込みで600万円
- 大手商社系デベロッパーからの提示は、残業代込みで700万円
資格も大手での経験もある方でも、若手というだけで、これだけ動くことがあります。
とはいえ、デベロッパーなら必ず下がる、というわけでもありません。この方は、いま挙げた700万円のデベロッパーとは別のデベロッパーからは、残業代込みで800万円以上の提示も受けていました。同じデベロッパーでも、下がるところもあれば、年収をほぼ維持できるところもあるのです。上の表はあくまで参考。業態の名前だけで判断せず、ポジションごとに金額の中身を確かめることが大事になります。
キャリアチェンジは、年収を上げるための動きではなく、働き方や将来性を取りにいくための動き。そう捉えるのが、実態に近い見方です。
踏み出す前に
業態を移そうか迷っている方に、最後にお伝えしたいことが2つあります。
「全部良くなる」とは限らない、と分けて考える ── デベロッパーに移れば、働き方は楽になります。ただ、年収まで一緒に上がるとは限りません。働き方と年収を分けて、自分はどちらを優先したいのかを先に決めておくと、提示額に振り回されません。
下がる前提で、得るものを言葉にする ── 残業の減少、休日の安定、将来性。年収と引き換えに何を取りにいくのか。それがはっきりしていれば、多少下がっても納得して動けます。
ガウディキャリアでは、建築技術者の転職支援を専門にしています。業態を移すべきか、いまの会社で動くべきか、まず自分の年収が市場でどう動くかを知りたいという方は、お気軽にご相談ください。
年収を上げたいという気持ちと、働き方を変えたいという気持ちは、似ているようで違います。その2つを分けて見たときに、本当に取るべき選択がはっきりしてきます。
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ガウディキャリア INSIGHT 編集部
監修:ガウディキャリア(株式会社Wheelsup運営、有料職業紹介事業 14-ユ-301559)
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